今月も感想文やってくよ〜

 新年最初のこのシリーズ。取り上げるのはこれ。

金沢加賀百万石モノノケ温泉郷 オキツネの宿を立て直します! 編乃肌

 あらすじ。主人公結月は高卒後実家の宿を継ぐつもりでいたが、今の女将、結月の母は自分の代で宿を畳むつもりだという。喧嘩し、家を飛び出した結月が行き遭ったのは黒い狐。それに連れられて行った先は妖の世界のオンボロな宿、オキツネの宿。結月は狐たちが営むその宿を立て直す手伝いをし、同時に実家の存続の為に女将修行を積むことになる。

 はい、シャベさんが好きな感じのハッピーな感じの怪異ものです。タイトルに金沢とありますが、実際舞台になるのは金沢よりちょっと南の加賀温泉郷と所謂『向こうの世界』です。シャベさんは金沢出身なので舞台設定的なことはすんなり入ってきた。個人的に狐が主役なのが評価高い。シロエちゃんが狂おしいほどにかっわいい。一家に2人(2匹?)ぐらい欲しいです。

 まあそんな上っ面だけで語るならこんな記事書かないです。もうちょっと切り込むね。

 と言っても、正直なところこの作品、気になるところが無い訳ではないです。主に現世での話について。「JKがこんなこと吐かす筈がない!」とか、「JKが叔父さんとのドライブでそんなウキウキになる筈ない!」とか。いや、8割型偏見だけど。まあこれに関してはシャベさんがJKのことを知らな過ぎるのがいけないかもしれない。けど、「傍に居る人と共有した方が、楽しさは二倍、嫌なことは半分」なんてセリフ出てくるか?こんな良い子知らんぞ。結月が友達との関わりの中で大事なことに気づくってシナリオなんだけど、別にこのセリフ無くても成り立つと思うし。叔父さんとのは仕事のついでだからおいといて、友達とのお出かけの先が地元の観光地ってのもなぁ。自分自身の地元嫌い(正確には地元の観光地嫌い)も相まって色々モヤりがあったりします。あとは、地元ネタの解説をくどく感じるとか。これはまあ地元民特有の悩みなのですが、先述のモヤりと今のくどさが同時に来るシーンはちょっときつかった。

 まあ。それは置いといて。この作品が真価を発揮するのってもっと別の場面だと思う。今回の場合、具体的には、物語の山になる部分。

 この小説、大体の流れとして、オキツネの宿の仕事で起こった何かしらを、主に元の世界で得たヒントを基に解決していくのを繰り返すって構成なんだけど、このうち解決の部分が巧い。さっきまでダラダラ書いたモヤモヤする部分はヒント集めの時の話だし気にならなくなります。なんか、物語として上手いな〜ってなる。エモーショナルな展開とかクレバーな作戦とかの盛り上がりがかなり強め。山の部分が当然話の肝になるので、多少谷でアラがあっても補って余りある程の良さを魅せてくれる。個人的に、小説の評価として何よりもストーリーとしての面白さに重きを置いているので、こういった面白い小説は大好き。ただ、終盤の後出しジャンケン感は否めなかったかな〜。とは言ってもまあ、最終章の序盤では必要な要素は出揃ってたしいいかな。雑な紹介だけど、これ以上言うとネタバレになりかねんのでこの辺で。

 あとは、狐たちの魅力についても語っておきたいですね。まずは宿の主、カガリさん。大人の気品に溢れた美しい男性で、かなり有力な妖。言葉の端々から感じられる麗しさが凄い。もうちょっと頑張ればR指定付くぐらいにはなったと思う。付かなくてよかった。次に中居のクロエツンデレ。かなりツンの成分が強めだが、宿への想いも強い。最初は結月に対しても敵対的だったけど、次第に打ち解けていく様はもうデレとしか言いようがない。ガサツなようでいて女子2人に対する気遣いを忘れてないのも高評価。イケメン。最後、これも中居のシロエ。しっかりもの。かわいい。本作最大の萌えポイントだと勝手に思ってる。挿絵のない小説なのにかわいいのがわかる。口調がかわいいし挙動がかわいいし体調悪くても頑張ろうとするのが健気かわいいし(けど休んで欲しい)自分がきつい時も結月を心配するのやさしかわいいし表紙イラストのちょっと垂れ目っぽいのもかわいい。かなり好きな感じのキャラ。元気に動いてるところが見たいのでコミカライズされてほしい。作中唯一終始人間態でいた子でもある。狐の姿も見てみたいな。変身後も結月を背に乗せられない程小柄だったりしたら最高。その他、向こうの世界の住人達のディティールがかなり良い感じ。それだけに、現世もう少しなんとかして欲しかった感はあるが、やっぱりメインは妖の方なのでこれぐらいで良いかな。

 纏め。なんだかんだ言いつつ最終的な評価は高い。ストーリーが十二分に面白いので結構良い本だと思ってます。この世の大抵の小説がそうだと思うけど、続きが気になる終わり方だったし、続編出て欲しいな。できれば妖の方もっと掘り下げて。なんかサブタイまで付いてるし次もありそうだな。同じ作者の他の作品も気になります。ではでは〜。