Wへようこそ/強く優しい仮面ライダー

 語るぜ、仮面ライダーW!!!!!!

 Wはシャベさんが一番好きな特撮ドラマ作品です。記事タイトルはダブルのサブタイっぽくスラッシュで分けてあります。『Wへようこそ』はOP歌詞。先日の記事(https://sherbetcocoa.hatenablog.com/entry/2020/12/20/164538)読んで下さった方はわかるかと思いますが、そこでWの主人公、翔太郎とフィリップについて余談として触れ、いっそ一度Wという作品について語ってみようかと思い立ってこの記事を書いています。W知らん人が呼んでもある程度楽しめるように、ネタバレになるような核心を突く話は避けつつ粗筋とか設定の説明が多くなりますがご容赦下さい。

 物語の舞台は風の街、風都。この街には、とある都市伝説がある。市民を脅かす怪物と、市民を守るバイクに乗った仮面の英雄の存在。人々はその英雄を仮面ライダーと呼んだ。その仮面ライダーに変身するのが、本作の語り部でもあるハードボイルド気取りのハーフボイルド私立探偵の左翔太郎と相棒の魔少年フィリップ。翔太郎が腰にダブルドライバーを装着すると、フィリップの腰にも同じものが召喚される。フィリップが属性、翔太郎が攻撃手段に関わるガイアメモリをそれぞれ装填すると、フィリップの意識が翔太郎に転送され、2人で1人の仮面ライダーが完成する。

 ガイアメモリとは地球の記憶を内包した大振りのUSBメモリ型アイテム。ライダー、そして怪人であるドーパントの変身に使われ、例えばマグマメモリを使うとマグマドーパントになる。

 ドーパントは基本的に一般の風都市民が変身したもの。市民にメモリを流通させている敵組織はミュージアムという名で、その目的は全人類を地球の記憶と一体化させ強制進化させること。

 ダブルは2人で1人の戦士ということで、2人の息が完全に合っていないと戦えない。息が合わない故の変身解除も幾度かあったが、それを乗り越えるストーリーが熱いのだ。筆者の一押しは32話。フィリップのパワーの増加で変身が出来なくなった際、ダブルに変身能力を授けた人物は翔太郎を見限ろうとした。弱いダブルは必要ない、と。しかい翔太郎は周囲の支えを受けながら、その心持ち、雑な言い方をすれば気合いで乗り切ってしまった。ダブルは兵器じゃない。翔太郎のハーフボイルドな優しさも必要である。そして2人は究極の境地へ辿り着くことになる。

 さて、冒頭の先日の記事の話に移ろう。そこでは強さと優しさを併せ持つことについて触れた。翔太郎とフィリップのペアは、これにピッタリハマるのだ。強さとは知性。フィリップは『地球(ほし)の本棚』という特殊能力を持ち、これであらゆる知識を得、敵のメモリ、正体を調べることができる。しかしその情報量は膨大。というか無限大。何しろ地球の全ての記憶が詰まっているので、本人も全てを把握しているわけではない。そこで、インターネットの検索のようにキーワードを打ち込んで絞り込みを行うのだが、正確な絞り込みには簡単なキーワードでは不十分。彼自身、答えに直結する柔軟な発想に欠けると自覚している。そこで役立つのが翔太郎の優しさ=想像力だ。彼の柔軟な発想が答えを導くことが多かった。尚、強さと優しさをそれぞれ知性、想像力と換言したことについては冒頭のリンクの記事に詳しい。また、先ほども触れたが、ダブルが究極に至る鍵も翔太郎の優しさであった。1人では重た過ぎて1つしか持てない強さと優しさを併せ持つにはどうすればいいか。答えは単純、半分こすれば良いのだ。ダブルは、半分ずつ抱えたものを合体することで1つに纏め上げている。やっすい言い方になるが『協力』を地で行くヒーローなのだ。合体こそ不可能だが感情の分割や仲間の欠落部分の相互補完というのは、現実を生きる私たち普通のホモ・サピエンスにも大事なものだ。これが出来ないと本当に潰れてしまう。あまり語りたくはないが筆者自身の経験則なので例外はあれど間違いは無い。

 ダブルの魅力は話の構成にもある。サクッと纏めてしまおう。1つの事件は2話完結でストーリーを理解しやすく、コミカルな描写も多め。所謂額縁小説のように、翔太郎の語り→本編→翔太郎の語りという構成になっているのも、探偵が主人公なだけあって推理小説的な惹き込まれ方を演出する。主人公が2人いて語り部役が人間的に成熟し切った方である翔太郎というのもポイントで、フィリップの成長物語を二人称視点で見ることが出来る。岡目八目なんて言葉があるように人の状態は他者から見た方がわかりやすいもので、これも他作に無い本作ならではの面白さと言える。足で稼ぐ探偵という仕事柄や陸海空全対応の汎用性によるところもあって、最近のライダー作品では減ってきたバイク使用も多く、それがいちいちかっこいい。ダブルの能力についても、強化フォームが初期フォームの上位互換ではないというのが良い。2本のメモリを組み合わせて戦うということや2人揃う必要がある点等で、最終フォームが最適解ではない場面も多い。終盤でも初期フォームに見せ場が用意されているのが嬉しい。2号ライダー、アクセル周りのストーリーも重く辛く、見応えがある。先述の感情半分この話、アクセル変身者の照井竜は分かち合う相手がいないんだよなぁ……。ガジェット類のメカニックなディティールも男心を擽る何かがある。かと思えばダブル自身はかつて無い程シンプルで……語り出したらキリがない。

 映画にも触れておこう。サブタイはAtoZ/運命のガイアメモリ。『平成仮面ライダー映画リバイバル上映会』では『みんなで応援したい映画』1位に輝いた。終盤、ピンチのダブルを救うのが風都の人々の応援なのだ。風の街っぽい演出は必見。黒幕の仮面ライダーエターナルの描き方や、フォームチェンジラッシュ等テンポの良い魅せ方が上手い。もう坂本監督に足向けて寝れねえよ。思えば俺の好きな作品大体この人が関わってる。石川民は適当に日本海に足向ければ多くの尊敬する人には向かないから楽。

 正当続編である漫画『風都探偵』も忘れちゃいけない。本編のその後の読み応えは抜群。Wの悪役は一部の一般市民なので、黒幕のミュージアムが壊滅してもガイアメモリは街に残り続ける。この特性により、下手したら永遠に終わらないようなストーリーだって作れてしまう。遺された悪意によって新たな組織が動き出したりする。そんな展開を無限に楽しむことができる。

 纏めるよ。要するにWは名作です。観て。