この記事、GWに出すべきだったのでは?

 どうも、シャベココです。何故先週書かなかったか謎ですが、今回もやっていきましょう。本紹介。……絶対ゴールデンウィーク中の方が需要あったよね、これ。まあうちのTLでお勧めの本を尋ねる流れ来てるから丁度良いか。

京都西陣なごみ植物店 「紫式部の白いバラ」の謎  仲町六絵

 キャラクター文庫の紹介するの、なんか久しぶりな気がするな。
 京都府立植物園の新米職員神苗健の元に届いた、ある親子からの質問。「逆さまに咲くチューリップって、どこにあるんでしょうか……?」突飛な問い掛けに戸惑う神苗を助けたのは、『植物の探偵』を自称する女性。『なごみ植物店』の店員でもある彼女和久井実菜が解き明かす、植物に纏わる謎の数々。そして神苗と実菜の恋。優しさ溢れる連作ミステリー。
 あらすじにも書いた通り、植物に関する謎を解くミステリーです。ミステリーとは言いますが、基本的に事件が起こるわけではありません。名前のわからない植物の特徴を元に実菜が種名を言い当てる感じ。植物の知識が前提なので、自分で謎を解きながら読みたい系のミステリ読者は植物図鑑を手元に置きましょう。ただ、知らなかったとしても解決パートで知ることになるので、知識の入口としても良き。
 ただ、伏線もちゃんと貼ってあるから知識さえあれば謎も解けるとはいえ、ミステリーとしての読み方じゃなくて、いじらしい感じのラブストーリーとして読んだ方がいいかもしれない。数々の謎を解きながらゆ〜〜〜っくり近づいていく神苗と実菜の距離。植物(花)というオシャンティなテーマの話なので雰囲気もいい。素敵。神苗も歴史知識で実菜の推理をサポートしているので、『主人公なんもしてねーじゃん!』みたいな日常系ミステリーにありがちなやつも回避してキャラの魅力が立っていて、実菜の恋情にも共感が持てる。これ、言っちゃ悪いが意外と(主に男性サイドの)キャラに魅力を感じない恋愛小説も多いので重要な要素です。それをしっかりやってくれてる。他を貶める形で紹介をするのはどうかと思うが、そうせざるを得ないほどに恋心に共感できない恋愛小説が多いんですよ、この世には。本を選ぶときは気をつけましょう。
 クソ余談になったので戻します。細かいところですが、各話の最後にその話でキーになった植物のイラストが掲載されています。挿絵のない文庫という媒体でこれやってくれるのありがてえ。白黒だけど十分に美しく、わかりやすく描かれています。
 纏めに入ります。ミステリーを期待しながら読むと微妙かもしれませんが、オタク好きのするゆっくり進展する恋を読みたい人にはおすすめです。

おひさ〜

 おひさ〜じゃないが。どんだけ空いたんだ前回から。4月最初の土日とか普通に暇だったのに何で書かなかったんだ。愚図め愚者め愚鈍め。骨頂of愚ですよまじで(この表現気に入ってる)。
 そんなトリプル愚のシャベさんが今回紹介する本は此方でござい〜。

100文字SF 北野勇作

 文字通りの内容。100文字で書かれたサイエンスフィクションが200作収録されてる本です。作者のTwitterで公開されている作品から厳選された200篇。何れもハイレベルです。
 100*200。1冊通してたった20000文字です。なのに情報量がすごい。一つ一つが独立したエピソードであるとはいえ、描かれている世界の広さが凄過ぎる。しかもその世界をたった100文字で表現しきっている。勿論世界観の説明だけに100分の100文字を使うわけではない。きちんとストーリーまであった上で世界観の提示がなされているのだ。SFだけあって当然作中世界には読者の常識が通じない。例を挙げればキリがないが、中にはそもそも人類が存在しない世界でのエピソードもある。そのことが頭にスッと入ってくるのすごい。ストーリーを語りながら並行して説明がなされている。説明からシームレスに本題に移行している。そもそも言わなくてもわかるでしょ?ってな感じで端折られたり短く纏められたりすることも多い。自分もSFではないけど同じように前提となる世界観が読者のそれとは違うタイプの作品を描いてるんだが、説明パートを設けてそこに1000文字強かけてごめんなさいって感じ。この際余談挟むが、自分の小説の方は進捗がクソすぎるから暫く世に出せません。プロローグに時間掛からな過ぎて見積もり甘くした。
 あと、この小説の100文字と言う数字の丁度良さ。これより多いと面白くないんだよね、多分。薄めて伸ばす感じ。100文字と言う狭い制限があって丁度な濃さになっている。どの作品も元の文字数が少な過ぎで、それでいて内容がしっかりしているのでその気になればいくらでも膨らませることはできるだろうけど、作者はそうしなかった。100文字にした時が心地良過ぎてもっと字数を増やすとか出来ないと思う。
 あとは装丁。ここもハヤカワさんの遊びが効いていて、タイトルや帯の紹介文はおろか、作者略歴まで100文字で書かれている。凝り過ぎ。
 そんな訳で超久々のブログ更新でした。次は何読もうかな。

今回は趣向を変えて

 シャベココです。今日もやっていきますよ、読書感想文。
 と言いたいところなんですがね。先月本読んでないんですよ。いや、読んでないことはないけどね、ここで記事にしたいような面白い本に出会えなかった。続きを読めば評価が変わるかもしれないというのが一冊、主人公が気に食わなくてかつ変化が見込めないのが一冊。前者に関しては来月書くかもしれない。つーか別に先月読んだもので書かなきゃいけない決まりは無いんだけどね。思い出すのが大変なので。
 つー訳で今回はタイトルにもあるように趣向を変えて、漫画の紹介でもしようと思います。

星屑テレパス  大熊らすこ

 内気な少女・小ノ星海果は、自分の居場所は地球には無い、宇宙に行って宇宙人に会いたいと考える。高校2年の始業式、海果のクラスに転校生がやってきた。自称宇宙人の明内ユウである。騰がってしまい上手く話せない海果のおでこにユウがおでこをくっつけると、海果の感情がユウに流れ込んだ。宇宙に行きたい海果と宇宙に帰りたいユウが共に宇宙を目指す物語。
 百合です。とっっっっっっっっても素敵な百合です。おでこくっつけるやつ、おでこパシーと呼ばれてるんだけど、これがいい雰囲気なんですよ。身体的接触を伴う百合。キッスではないの。もっと進んだえっちぃ行為でもない。ただおでこをくっつけるだけ。この距離感というか、付き合い方が絶妙。キッスにまで発展しないのがいいわよね〜。話すのが苦手な主人公と話さなくても分かる宇宙人の対比も見事で、こう言う関係だからこそ口に出して言う『心からの言葉』が強く印象に残る。勿論登場人物は他にも居るんだけど、皆いい子ばっかりなの。そしてその子らも、言葉なんていらないんじゃない?ってぐらい周りをよく見て察することができて、だからこそ言葉にした感情が刺さる。悪意の人間がいないので心穏やかに眺められるのも良い。
 なんか色々語った上で言うのも何だけど、この作品語る上でまずは単行本の表紙絵見て欲しい(まずはって何だっけ)。
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こんなん。やばくない?作品世界観の美しさが伝わってくる。ユウちゃんの髪の毛の広がりが画面に躍動感を産んでるし、先述の『接触型百合』というのも表現されてる。そして、この絵の雰囲気が殆どのカラーページでも同じように適用されてる(単行本では白黒だけど)。どころか、普通に白黒の本編でもこんな感じ。色が無い分、代わりにコマ周辺の装飾でぱっと見の絵力の強さを引き出している。その装飾も見事で、例えば殆どのコマで髪の毛やら腕やら、何かしらのものがはみ出していることで動きを出したり、星を散りばめて可愛く彩ったりと言う感じ。色がないのに見劣りしない。まあつまり何が言いたいかというと、画力が高すぎる。
 で、強すぎる感情と強すぎる絵力がドッキングしたらどうなるか。答えは簡単。超新星爆発が起こる。何度死にそうになったことか。というか何度死んだことか。
 百合に殺されたい人は是非読んで見てください。開幕3ページぐらいで死ねるから。

今月2度目の読書感想文

 エアコンが息をしていない部屋には風邪をひいてしまいそうなほどの冷気が漂っています。そこに響くのはタイピング音と、課題が終わらないことへの焦りから来る心音だけ。ちょっと硬いベッドに腰掛け、ネタバレに配慮した結果スッカスカになってしまった前回のブログのリベンジに勤しむ端正な顔立ちブロガーは誰か。そう、私です。あ、冗談ですよ?そして、彼が今回の記事のテーマに選んだ本は何か。そう、勿論アレです。

魔女の旅々  白石定規

 書き出しで分かった人も多いかも。かもじゃねえわ。確定だろ。取り敢えずあらすじをば。
 史上最年少で魔法使いの最高位・魔女の称号を得たイレイナが送る旅の物語。旅には楽しいことも辛いこともある。出会いがあれば別れがある。魔女を目指す少女に道を示したこともあるし、花に魅せられた少女を救えなかったこともある。箒が描く旅の軌跡は、読む人みんなを惹きつけるはずです。
 シャベさんにしては珍しくラノベのレビューです。そもそも自分で買ってラノベ読むのが初めてだったりする。けどね、これ、やばいよ。ラノベだと思って舐めてかかると痛い目見る。
 ライトな部分で言えば、イレイナさんの語り口が軽快で心地良い。結構毒やジョークの効いた言い回しが癖になるし単純に面白い。この記事の冒頭の書き出しも本の各章を再現したものなんだけど、こんな感じで情景描写+自顔自賛(自分の顔面の良さを自分で褒め称えること)して誰でしょう?と問いかける。これが俺のストライクゾーンに刺さった。記事の冒頭見て気に入ったら本読んでね。イレイナさん、基本的に丁寧語キャラだから毒とジョークが引き立つのよね。お淑やかな口調から放たれる口の悪さ、好きな人多いでしょ。この表現のお陰で、リズミカルに読むことが出来る。リズミカルに読めるってことは要するに読んでて楽しいってことだよ。
 ノベルの部分で言うと、構成が巧い。伏線張るのは多過ぎず少な過ぎず、わかりやす過ぎずわかりにく過ぎずって感じなので、先の展開を予想してみたり、再読してみたりと言う楽しみ方が可能。特に再読性に関して、例えば再読の楽しさで知られるワールドトリガーみたいな長期間ずーっと繋がった物語じゃなくて、魔女旅の各章はとっても短いのに、「あー、そういえばさっきそんなこと言ってたなー」ってなるのが凄い。短い中にもしっかり印象的なところがあって密度が高いからこそ、こういう感想になるのだ。伏線部分以外の内容が薄かったら、先の展開を予想ではなく『断定』してしまうことになるし、「そういえば」という感想を抱くことは無い。オチがわかる物語とか当然つまらんでしょ。魔女旅の場合、展開が読めちゃって面白くないなんてことは滅多に無いし、たとえあったとしても美しいオチまでは予想できないと思うので(俺自身がそうだった)安心して手に取って欲しい。
 そして、時系列が一定でないのも読みやすさを高めている。誰にとっても旅の始まりは特別なもの。そういうのじゃなくて、魔女であり旅人でもあるイレイナさんにとって旅は日常的なものであって、旅をすることは当たり前のことだから、普通の旅を開幕で読者に提示するってのが巧いと思う。チュートリアルキャラが居る訳でもないから、第1話が旅の始まりだったら世界観設定とか頭に入って来ないしね。そして、読者がちゃんと作中世界における魔法とか国とかの設定を理解した頃に旅立ちの物語や旅に出る前の物語が描かれる。こうすることで、事務的な説明文章、つまり読者を現実に引き戻すものを最小限に留めている。故に作品に没頭しやすい。
 それから、あらすじでも書いたように旅には楽しさと辛さの両面がある。読者が初めて作品に触れる第1話は楽しいエピソードで、その次の第2話ではもう辛いエピソードになる。かなり早い段階で、ただ楽しいだけの旅じゃないことがわかって良い。全体で見ても悲しいお話の割合が高めで、イレウナさんは肉体的にも精神的にもかなりキツい目に遭っている。主人公がただ無双してるだけじゃないの、良いよね。そもそもイレイナさんの能力だってきちんと努力して身につけたものだし。8割型偏見混ざってるけど、転生したら最強になったり最強の力を逆襲のために振りかざしたり中身餓鬼なのに女の子にモテまくりだったり、以上に特に理由づけがされてなかったりする最近のラノベ主人公は見習え。閲覧数を稼ぐため『見られる作品』にするべく異世界転生とか逆襲とかハーレムとかに走ったなろう小説等とは違い、魔女旅は初めは自費出版されていたものなので、純粋に『良い作品』を書こうとしてるのが伝わってくるし、実際良い作品だと思う。
 纏めに入るよ。#魔女の旅々はいいぞ はい終わり。語るべきことは語り尽くしたので短く纏めたよ。ではでは〜。

今月の

はい、恒例のやつです。

クビキリサイクル 青色サヴァン戯言遣い  西尾維新

 今回は子に記事シリーズでは珍しく(?)有名どころから引っ張ってきました。

 鴉の濡れ羽島は赤神イリアの元に集められた天才達。画家の伊吹かなみ、料理人の佐代野弥生、七愚人の園山赤音、占術師の姫菜真姫、技術屋の玖渚友。そして、伊吹かなみの介護人の逆木深夜に、玖渚友の付き添い人のぼく。メイド長の班田玲と、三つ子のメイド千賀あかり・ひかり・てる子。12人がいるこの島で殺人事件が起こった。死因は首を切られたこと。犯人は島の中にいる──。
 作中、書かれていることは全て伏線であると言っていいほどに真相に繋がるし、ミスリードらしいミスリードは無い。なのに最後にはとんでもないいどんでん返しが待っている。真実しか書かれていないはずなのに、全てが嘘のように感じる。そんなミステリー。
 
うーむ、困ったな。ミステリーは特に紹介しにくいんだよ。下手なこと書くとトリックのネタバレになりかねん。まあ、だいぶ苦しみながらヒント出すとすると、タイトルは100%真実ですよ。
 ことあるごとに入る地の文の一言「戯言だ」がいい味を出している。ぼくくんの心を描き出すのが巧過ぎる。使い過ぎじゃないかってくらい何度も出てくるこの言葉が残す印象の強さ。戯言は雰囲気作りだけでなく、伏線としても役立つ。勿論ただの心理描写として働くこともある。嘘のような話もいっぱいある。戯言遣いの戯言を探すだけでも楽しく読める。
 終わり!ミステリーはこれ以上語れん!不完全燃焼感強いから来週も投稿する!クビキリは面白いから読んで!分厚いからハードル高く見えるけど読んでみたらのめり込んでサクサク進んじゃうから!(今回、紹介として弱すぎでは?)

小説書いたで

 pixivに小説投稿しました。 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14583458  つってもまだプロローグだけどね。タイトルすら決まってないし。正確には、一応決まってはいるけど渋には書いてない。まあいいか。ここで決めちゃえ。幸御魂高校文芸部 あやかし研究隊はい決定。後の展開に合わせて決めようとして高校名が難航してたんだけどね、悩むのはもういいや。決めてから考えればいいんだ。軽く検索した感じ被りとかは無さそうだしヨシ!📞😺まあタイトル決まったところでプロローグだけじゃなんもわからん。まあ続きは今後書くので、一応キャラクター紹介しときますね。

花崎 鉉魏(ハナサキ ツルギ) 本作の主人公。鍛冶屋の息子。小5の時から鍛治の技術を学ぶ。小6で父親が事故死、それに伴い母親は蒸発。父の死以降も彼の仕事仲間などの元で教わり、高校入学とともに父の店を再開する(学校からは複雑な家庭の事情を汲まれて許可を得ている)。妖狐と契約して半人半妖の存在に。契約の方法が『名前で相手を縛り合う』というもので、『酒菊 春月(サカギク ハルツキ)』の名を与えられる。人に仇なす妖怪を斬り、妖を脅かす人間を討つ為に妖刀・紫焔(ユカリホムラ)を振るう。趣味は鍛治と小説。

酒菊 夜桜(サカギク ヨザクラ) ヒロイン。ツルギと契約した妖狐。プロローグでツルギと遊んでいた狐の正体。名前は契約の際にツルギにつけられたもので、本名は伏せている。妖狐の世界の名家(現世における皇族のようなもの)の一人娘。将来は神子(みこ)と呼ばれる存在として人々の希望になって崇め奉られるだけの生活になると決められており、それに嫌気がさして家出。ツルギに匿ってもらう代わりに、家庭がぶっ壊れたツルギの心の支えとなる。

取り敢えず第一章の主役2人。100%俺の趣味だけで紡がれる物語なので、推しがメインヒロインになるようにしました。

 目標は隔週更新。正直割ときついと思ってる。けどまあ、失踪はしないと誓うので、楽しみにしてくれたら嬉しいです。

今月も感想文やってくよ〜

 新年最初のこのシリーズ。取り上げるのはこれ。

金沢加賀百万石モノノケ温泉郷 オキツネの宿を立て直します! 編乃肌

 あらすじ。主人公結月は高卒後実家の宿を継ぐつもりでいたが、今の女将、結月の母は自分の代で宿を畳むつもりだという。喧嘩し、家を飛び出した結月が行き遭ったのは黒い狐。それに連れられて行った先は妖の世界のオンボロな宿、オキツネの宿。結月は狐たちが営むその宿を立て直す手伝いをし、同時に実家の存続の為に女将修行を積むことになる。

 はい、シャベさんが好きな感じのハッピーな感じの怪異ものです。タイトルに金沢とありますが、実際舞台になるのは金沢よりちょっと南の加賀温泉郷と所謂『向こうの世界』です。シャベさんは金沢出身なので舞台設定的なことはすんなり入ってきた。個人的に狐が主役なのが評価高い。シロエちゃんが狂おしいほどにかっわいい。一家に2人(2匹?)ぐらい欲しいです。

 まあそんな上っ面だけで語るならこんな記事書かないです。もうちょっと切り込むね。

 と言っても、正直なところこの作品、気になるところが無い訳ではないです。主に現世での話について。「JKがこんなこと吐かす筈がない!」とか、「JKが叔父さんとのドライブでそんなウキウキになる筈ない!」とか。いや、8割型偏見だけど。まあこれに関してはシャベさんがJKのことを知らな過ぎるのがいけないかもしれない。けど、「傍に居る人と共有した方が、楽しさは二倍、嫌なことは半分」なんてセリフ出てくるか?こんな良い子知らんぞ。結月が友達との関わりの中で大事なことに気づくってシナリオなんだけど、別にこのセリフ無くても成り立つと思うし。叔父さんとのは仕事のついでだからおいといて、友達とのお出かけの先が地元の観光地ってのもなぁ。自分自身の地元嫌い(正確には地元の観光地嫌い)も相まって色々モヤりがあったりします。あとは、地元ネタの解説をくどく感じるとか。これはまあ地元民特有の悩みなのですが、先述のモヤりと今のくどさが同時に来るシーンはちょっときつかった。

 まあ。それは置いといて。この作品が真価を発揮するのってもっと別の場面だと思う。今回の場合、具体的には、物語の山になる部分。

 この小説、大体の流れとして、オキツネの宿の仕事で起こった何かしらを、主に元の世界で得たヒントを基に解決していくのを繰り返すって構成なんだけど、このうち解決の部分が巧い。さっきまでダラダラ書いたモヤモヤする部分はヒント集めの時の話だし気にならなくなります。なんか、物語として上手いな〜ってなる。エモーショナルな展開とかクレバーな作戦とかの盛り上がりがかなり強め。山の部分が当然話の肝になるので、多少谷でアラがあっても補って余りある程の良さを魅せてくれる。個人的に、小説の評価として何よりもストーリーとしての面白さに重きを置いているので、こういった面白い小説は大好き。ただ、終盤の後出しジャンケン感は否めなかったかな〜。とは言ってもまあ、最終章の序盤では必要な要素は出揃ってたしいいかな。雑な紹介だけど、これ以上言うとネタバレになりかねんのでこの辺で。

 あとは、狐たちの魅力についても語っておきたいですね。まずは宿の主、カガリさん。大人の気品に溢れた美しい男性で、かなり有力な妖。言葉の端々から感じられる麗しさが凄い。もうちょっと頑張ればR指定付くぐらいにはなったと思う。付かなくてよかった。次に中居のクロエツンデレ。かなりツンの成分が強めだが、宿への想いも強い。最初は結月に対しても敵対的だったけど、次第に打ち解けていく様はもうデレとしか言いようがない。ガサツなようでいて女子2人に対する気遣いを忘れてないのも高評価。イケメン。最後、これも中居のシロエ。しっかりもの。かわいい。本作最大の萌えポイントだと勝手に思ってる。挿絵のない小説なのにかわいいのがわかる。口調がかわいいし挙動がかわいいし体調悪くても頑張ろうとするのが健気かわいいし(けど休んで欲しい)自分がきつい時も結月を心配するのやさしかわいいし表紙イラストのちょっと垂れ目っぽいのもかわいい。かなり好きな感じのキャラ。元気に動いてるところが見たいのでコミカライズされてほしい。作中唯一終始人間態でいた子でもある。狐の姿も見てみたいな。変身後も結月を背に乗せられない程小柄だったりしたら最高。その他、向こうの世界の住人達のディティールがかなり良い感じ。それだけに、現世もう少しなんとかして欲しかった感はあるが、やっぱりメインは妖の方なのでこれぐらいで良いかな。

 纏め。なんだかんだ言いつつ最終的な評価は高い。ストーリーが十二分に面白いので結構良い本だと思ってます。この世の大抵の小説がそうだと思うけど、続きが気になる終わり方だったし、続編出て欲しいな。できれば妖の方もっと掘り下げて。なんかサブタイまで付いてるし次もありそうだな。同じ作者の他の作品も気になります。ではでは〜。